黒川伊保子さんの脳に関するコラムサンクスデイズ・スタイルでは、さまざまなジャンルの達人たちが団塊世代の毎日をさらに輝かせるヒントをコラム形式でご紹介します。

黒川伊保子・脳コラム|サンクスデイズ・プラチナ

永遠の感謝を、プラチナに刻んで

Thanks Days Style:黒川 伊保子 感性アナリスト・随筆家

苦楽を乗り越えて、いつまでもともにありたい夫婦。そのためには脳のメカニズムが大きく関わってきます。脳と感性という視点から、夫婦関係をアドバイス

第3回 感性の波を起こすのは潜在脳

人工知能を開発した経験から、脳を切り口にした恋愛、商品開発など多岐に渡る著書がある、感性マーケティングの第一人者・黒川伊保子さん。今回は、理性や感情とは関係なく、感性の波を起こす潜在脳についてお話します。潜在脳は人間の感情だけでなく、世の中の流れや流行も左右するほど、人類にとって大きな影響を及ぼしています。何百万年もかけて、生態圏を広げ、文化を成熟させてきた人類。その進化には、潜在脳が大きく働いています。この自然の法則を解説します。

「アナログ期」「デジタル期」も7年サイクル
「脳は一定の刺激に対して7年で飽きる」といいますが、これは感情や理性で理解していても逆らうことはできないのですか?

1回目でお話しました「夫婦28年目の危機」など、脳の特性を理解し、自分をコントロールしていれば大丈夫…のような気がしますが、脳は私たちが考えている以上に、大きな影響を及ぼします。というのは、私たちの脳には、何百万年もかけて、生態圏を広げ、文化を育んできた人類としての情報が刻まれているからです。同じ環境下で落ち着いてしまっては、進化が遂げられないので、「一定の期間を経ると、飽きて正反対のものを求める」という脳の潜在的な機能が働くからなんですね。私は、この「7年で飽きる」という脳のサイクルを「ブレインサイクル」と呼びます。長年、研究を続けてきて、このサイクルは「神」と呼ばれるものの一部なのかもしれない…と最近感じるようになりました。というのは、感性マーケティングを続けるうちに、個人だけでなく、大衆という集団になったときにもこの「7年で飽きる」というサイクルがあるからです。ここ数十年の流行を分析すると、画一企画で直線的なものがもてはやされる「デジタル期」と、グラマラスで独自性の強いものがもてはやされる「アナログ期」が繰り返されています。

男性は「デジタル脳」、女性は「アナログ脳」
デジタル期、アナログ期それぞれの特徴を教えてください。
思い出深い写真も多いはずです。
思い出深い写真も多いはずです。
ひと昔前の車は直線的で、現在は曲線的な車が多いのも、7年ごとの脳のサイクルに関係があるのです。
ひと昔前の車は直線的で、
現在は曲線的な車が多いのも、
7年ごとの脳のサイクルに関係があるのです。

熟年世代の方は、流行の変遷を体験しています。ですから昔の写真に写っている自分のファッションなどを見ていると「今思うと、なんであんなヘンテコな服を着ていたんだろう」と思うこともあると思います。

現在のトレンドと正反対の流行が繰り返される…これは、「アナログ期」「デジタル期」がそれぞれ繰り返されているからなんです。それぞれ説明すると、「アナログな気分の脳」は、自然を愛し、個性やばらつきを愛しいと思い、感じることを大切にし、直感で判断したがります。そして自然素材や複雑な形状、紆余曲折あり意外性のある展開や、他者と共感することを心地よく感じます。まさに、現代のトレンドは「アナログ気分」ですね。そして「デジタルな気分の脳」は、合理的で論理的な事象を心地よく感じ、自然よりも都会を好み、シンプルな形状を好みます。そして、誰もが納得するひとつの正解に、最小コスト、最短パスでたどり着くことが好ましく、必然性のある展開が心地よく、他者と競争することを好ましく感じます。
この、デジタル、アナログを繰り返しながら、トレンドは変遷してきています。これに、私がお話した「脳のサイクル7年を4回繰り返すと、正反対のものを求めるようになる」ということを当てはめてみましょう。すると、28年前の1980年代はデジタル期。テクノファッション、DCブランドなど直線的なファッションが好まれていました。そして、社会は競争社会。受験でも出世でも、他者と競争することを好ましく感じる時代の気分でした。まさに今と正反対ですね。28年でトレンドが正反対になるということは、56年で流行は一巡します。これは車のデザインによく現れています。2000年代以降に発表された曲線を描いたうねりのあるデザインの車は、56年前の車ととても似ているんですね。デジタルな気分のときは、直線を多用したデザインの車が登場します。

さて、ここまで読めばもうお気づきかもしれませんが、時代の流れに関係なく、女性脳は「アナログ」な気分を好ましく感じ、男性脳は「デジタル」な気分を好ましく感じるという特性があります。

脳は想像以上に感情を左右している
お話を伺っていると、自分自身は脳に左右されている部分が大変大きいように感じます。特に女性はその傾向が強いように感じるのですが…。

男性も女性も、同じように強く「脳の生来のプログラム」に導かれていますよ。過酷な進化を生き残れるように、あらかじめ脳には、生存に必要な情報がプログラミングされていますから、脳の気分というのは自分自身のみならず、性差も超え、時代全体に作用します。
ただ、家庭という私的な空間では、アナログ派の女性脳に仕込まれたプログラムのほうが発動しやすいんですね。規範を尊び、合理的なことを好むデジタル派の男性脳のプログラムは、社会生活の中で遺憾なく発揮できます。 したがって、穏やかでしみじみとした夫婦の生活を楽しむには、男性が女性脳の性質を知って、コミュニケーションや日常に生かすことが大切ですね。そこで大切なことを、最後にもういちどお話しておきますと、「共感、一体感」と「過去時間の慰撫」です。男性のデジタル脳が具体性を求め、原因、理由をはっきりしたがる部分をそっとやりすごして、会話の一体感を楽しむようにする。熟年世代の夫婦関係は、スキンシップよりも、ことばに集約されます。若い世代よりも、ことばに気を配ってほしいですね。「暑かったのよ」「暑かったろうねぇ」、「痛かったの」「痛かったろうなぁ」などと相手のことばを反復するのも一体感を高めるコツです。たかがことば、されどことば。せっかく神様に与えられたことばですもの、達人になって、円満にお過ごしください。どうか、末永く、お幸せに。

次のテーマは、熟年世代ならではの、知的好奇心を満たす旅

黒川伊保子さんは今回で終わり。次は、ジャーナリスト・勝谷誠彦さんにバトンタッチ。戦場から世界の超一流ホテルまで、あらゆる場所に行った勝谷さん。その知識と経験から「熟年世代の旅」についてお話します。知的に時間を楽しむヒントをお届けします。
勝谷誠彦さん第1回へ

黒川 伊保子 Profile

感性アナリスト、随筆家。長野県生まれ。大学卒業後、民間企業にて14年間に亘り人工知能(AI)の研究に従事。
退職後、数社を経て2003年に(株)感性リサーチを設立。脳機能論とAIの集大成による語感分析法『サブリミナル・インプレッション導出法』を発表し話題に。感性分析の第一人者となる。

黒川伊保子|脳コラム|サンクスデイズ・スタイル:ページトップへ