Thanks Days Style:生 和寛 編集者・作家・モデル
気力、体力…あらゆる意味で若者を凌駕している団塊世代は、趣味を楽しむ黄金世代。そこで、「本物」を知る視点からその楽しさを解説します。
第3回 夫婦で週末、日常を離れる
雑誌・書籍編集者、モデル、エッセイスト、経営者など様々な顔を持つ生和寛さんは、多忙な毎日を過ごしています。いつもアグレッシブな生さんは、週末を奥様とともに静かなセカンドハウスで過ごしています。その生活と楽しみについて伺いました。
自分を都会からリリースしてリフレッシュ!
都内を中心に活動している生さんが、セカンドハウスを手に入れるきっかけは何だったのですか?
その前に、セカンドハウス(別荘)というと、「贅沢」という印象がありますが、必ずしもそうではありません。僕たちの世代が、都内に家やマンションを買うことを考え始めたのはバブル期です。そのとき、どんなに安くとも5千万円以上の予算が平均的でした。でも、セカンドハウスの場合、当時の予算の相場は2千万円程度。都内に家を買う予算の半分以下で手に入れられたんです。僕たち夫婦は都心のマンションをあきらめて賃貸物件に暮らし、週末リフレッシュするための環境を手に入れる選択をしたんです。今ではもっと割安な物件が多く出ていますから、「今から買っても遅くはなかったな」と思うこともあります。今、八ヶ岳の山麓と、小田原の海沿いにセカンドハウスがあり、それぞれ交互に毎週過ごしています。山と海の環境をそれぞれ享受できるのは、すばらしいこと。よく「別荘で充電しているんですね」と言われますが、とんでもない! 行ったら庭の手入れをしたり、焚き木をあつめたり、掃除をしたり、やることは山ほどあります。では、時間を縫ってなぜ行くかというと、自分を都会からリリースしてリフレッシュできるからです。
心と体が緩和していく心地よさを味わう
セカンドハウスでの生活の楽しみをお聞かせください。

八ヶ岳のセカンドハウスから見える風景。
夏は新緑の香り、秋にはすばらしい紅葉が楽しめる。
庭を造ることもセカンドハウスの楽しみ。
やはり、焚き火ですね。若い頃に比べて、この年になると暖炉に火をくべて読書をしたり、庭で焚き火をすることがしみじみと楽しくなります。人間は火を見ていると本能的に安心するんですね。東京を離れる前に持っていたイライラ、ソワソワした気持ちが、火とともに燃えていく感じがします。こういった皮膚で感じ本能に訴えるリラックス、心と体が緩和する心地よさというのは、僕たち世代の人間にとって、大切なことなんじゃないかな…と思います。 そのほかにはガーデニングですね。バランスを考えて植栽し、手入れして育てていくのは、第二の子育てみたいなものです。八ヶ岳は夏でも気温が低いので、雑草が気になりませんが、問題は小田原。温暖な気候なので、雑草が「草」というより「木」のような大きさまで育ってしまう。夫婦だけだと手入れが大変なので、最近は娘夫婦も参加するようになりました。家族で同じことをするって、しみじみと楽しいものです。
人生を包む環境を楽しむ
東京、八ヶ岳、小田原と3つのエリアで生活するのは体力が要るような気がします。
そんなことはありません。だって、自分の自宅がある生活圏だけで生きていても、週末になると、美術館、デパート、観劇、映画、レストランとあれこれ行きたくなるでしょう。そこを細切れに移動するよりは、別の生活圏に飛び込み、そこでの人生を楽しめばエネルギーは使いませんよ。人生に残された時間が見えてくるからこそ、小さなエネルギーを細かく使うよりは、ゆったりと人生を楽しみたい。もちろん、美術館やレストランに行くのは人生を充実させるために大切なこと。ですから、時間にゆとりができてきた熟年世代は、混雑していないウイークデーにそれらを楽しんで、週末はゆったりと過ごせばいいんだと思います。週末に小旅行するのもいいですが、それでは「移動」なんですね。セカンドハウスは自分の家ですから、インテリアや庭だけでなく、その土地の風土、文化から近所付き合いまで主体的に関りあわねばなりません。そして、家ですから「帰らなくていい」んです。まさに、人生を包む環境を複数持ち、それぞれを楽しむことなんです。これは「いずれ帰らねばならない」旅行では得られない、腰を落ち着けて安心できる楽しみです。
人間は自宅から50キロ離れるとリフレッシュできる
セカンドハウスには、人間をリラックスさせる要素が詰まっている気がします。
そうなんです。そもそも、人間は自宅や会社から50キロ離れると、リフレッシュする生き物だという話を聞いたことがあります。ですから、東京から50キロあたりにある、鎌倉・湘南エリアは日帰りリゾートとして絶大な人気を誇っているんですね。そして、人間が風景として安心できるのは林と草原の境界線である「林縁」です。人間は平地だと「外敵から身を守らなくては!」と自分を無防備に感じてソワソワしてしまい、林にいると獣や敵など「未知なる物から身を守らなくては」と不安になるんです。ですから、そのどちらでもない「林縁」を見ているととても落ち着く。その知識を得てから、庭の設計をするときに、林と平地を作りました。ですから庭を見ているととても安心します。多くの美しいもの、楽しいこと、美味しいものを経験してしまった熟年世代にとって、「本能から安心できる」ことは、なによりのご馳走かもしれません。あと、余談ですがセカンドハウスをこれから購入するとき、「自宅から車で2時間以内」という鉄則を守ってください。2時間を越えると、なんとなく億劫になって、そのうち行かなくなってしまいますから。
最初が楽しいと、次に興味がつながっていく
夫婦で同じ「遊び」を楽しむ秘訣を教えてください。

八ヶ岳のセカンドハウスにて、
備前焼のギャラリーを経営する奥様と。
山ははっきりとした四季を楽しめるところが魅力。
やはり、多少強引でも、情熱の強いほうが相手を連れ出すことかな。自分自身が「絶対楽しい!」と感じたことを相手に伝え、責任を持って相手が楽しめるようにすることが大切。幸い、僕たち夫婦はセカンドハウスの生活を楽しめていますが、虫が嫌いな奥様もいるでしょうし、出不精なだんなさまもいるでしょう。ずっと相手に気を遣い続けるのは大変ですので、せめて最初に行くときだけは、虫対策を万全にしたり、ごろ寝を黙って見守ったりしてみる。人間不思議なもので、最初が楽しいと、次に興味がつながり、3〜4回するころには、すっかりはまって積極的に動きだすなんてことも多くあります。これはセカンドハウスに限らず、すべての「遊びの夫婦参加」に共通することです。
次回からは、脳と感性の専門家である黒川伊保子さんにバトンタッチ。
熟年世代の男女のすれ違いをひもといていただき、夫婦で楽しく人生を過ごすコツを3回にわたって伺います。
生和寛さん第1回へ
生 和寛 Profile
編集者・作家・モデル。長崎県生まれ。大学では探検部に所属し、卒業生で結成した「創作集団ぐるーぷ・ぱあめ」にて、企業PR誌、旅行誌を手がける。40才で独立、株式会社ラニングを設立し、ファッション誌・ライフスタイル誌を中心に活躍中。週末は八ヶ岳と伊豆にあるウイークエンドハウスに通い、そこを拠点にガーデニングや登山、サーフィン、シーカヤックを楽しんでいる。